先日、ワールドアスレチックス(世界陸連)はマラソンのシューズについて『ソールの厚さを4センチ以下とし、反発力を生み出すプレートは1枚まで』という決定をしました。
これにより、東京オリンピックでのナイキ厚底シューズの着用が正式に認められることになりました。
世界陸連がシューズのスペックを定め、「ナイキ厚底」が認められたことで、騒動に一応の区切りがついたことになります。
ただ、この度の世界陸連の決定には問題があります。それは、世界陸連が定めたのは上記のスペックのみではなかったことです。
『4月30日以降は、大会前に4カ月以上の市販期間が必要。医療上の理由など以外ではカスタマイズすることはできない』ということも同時に決定されたのです。
つまり、選手は一定期間市販された既製品しか選択できなくなり、オーダーメードのシューズが締め出されることになるのです。
このような決定は果たして合理的なものでしょうか?
競技の世界では使用する機材のスペックを定めることは必要です。そうでなければ、選手間の対等性、公平性が担保できないからです。例えば、ゴルフのクラブでも一定の反発係数を超えるものは競技では使用できません。そこで、選手はそのスペックの範囲内で、自分の能力を最大限に引き出すことのできる、身体の特性に一番合った機材を求め、最高のパフォーマンスを達成しようとするのです。言い換えれば、選手が個々に異なる身体特性を持っている以上、レギュレーションのスペックの範囲内で機材の性能を工夫することは許されてしかるべきだと思います。実際にも、トップアスリートの世界では、競技の種類を問わず、機材のカスタムオーダーは半ば常識であると思います。
にもかかわらず、世界陸連は「シューズの市販期間」「カスタマイズ禁止」という物差しを設定しています。このような物差しは、私の感覚からすると合理性を見出すことが難しいです。
三村仁司氏のような伝説のシューマイスターの活躍を封じるための決定ではないかと勘繰りたくもなりますが、果たしてこれは私だけの穿った見方でしょうか?